イタリアのカーデザインに憧れ、九州大学芸術工学部在学中2011年に渡伊。ミラノ工科大学での交換留学プログラム、九州大学卒業後はイタリアのIEDトリノ校でカーデザインを学び、卒業後はFIATインターンにてキャリアをスタートした。役割が細分化された効率的な大手デザインスタジオの経験は素晴らしかったが、当時の石丸には自動車を作っているという実感が足りなかった。同時に技術的な知識が乏しくても進んでいくデザイン業務やスタイリスト的な感覚に違和感を覚えていた。
石丸が求めたものは「スタイリング」ではなく、あくまでも車の機能や企画を十分に理解した上で成り立つ本物の「デザイン」だった。
葛藤の中で出会ったのは日本のEVベンチャーGLM。一般的なカーデザイナーのキャリアではなく自分にしかできない経験を求め、エンジニアしかいなかった京都のGLMに半ば強引に入社させてもらったのは2016年のことだった。入社後は少量生産のEVスポーツカーやコンセプトカー、本格的な量産車プロジェクトに恵まれ、ワンオフから量産まで、2年間エンジニアの同僚に「自動車とは何ぞや」をみっちり叩き込まれた。帰国後すぐに出会った愛車、1981年式S130Zを整備していく過程でピュアな自動車の魅力や構造、機能にも多く気付き学ぶことができた。
GLMでの経験はまさに自分が求めていた、エンジニアや他の部署と一体で行う「ものづくり」の経験だった。大手と比べると規模は小さかったが、それゆえに幅広い責任の中で学びの日々だった。GLM唯一のデザイナーとして、コンセプト立案から内外装のスケッチ、3D、インターフェース、プレス発表までの１連のプロジェクトの流れは、内外の手を借りながらも責任を持って自分で遂行する必要があった。この経験が、一人でもカーデザインスタジオはやっていけるという自信に繋がった。
2018年に独立しFortmareiを設立。最初は周りの仲間がグラフィックデザインを発注してくれた。アパートの一室で始まった小さなデザイン会社だったが、設立から２ヶ月目のある日、受けた電話は旭化成からのコンセプトカーの依頼だった。以後、少しずつクライアントや協力会社との信頼関係を築きながらデザインスタジオとして成長していくこととなる。
いくつもの壁とデザインに関する多くの葛藤はあったが、幸運に恵まれ、仲間に恵まれ、心強い協力企業に恵まれて、カーデザインというフィールドでFortmareiは日々成長を続けている。石丸は常にクライアント目線でデザイナーよがりにならないデザインを心がけている。クライアントが本当に求めていること、ブランドやプロジェクトの核心を掘り起こし唯一無二のデザインを提案するために、私たちの技術や考え方、デザインに対する熱い想いが、クライアントの夢や目標の実現のための強力な武器となることを願っている。