未完の共創が、歳月を経て一つの造形に結実する

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ナンバーナインワークス株式会社
2026
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2014年、藤墳裕次氏率いるチームの手によって、スポーツEV「トミーカイラZZ」が誕生し、少量生産車としての認証を取得した。石丸がその開発元であるGLMへ入社したのは、それから2年後の2016年のことである。

当時、同組織にありながら、藤墳氏らがゼロから作り上げた完成体に石丸が筆を振る機会は訪れなかった。その後、2018年に両者は独立。藤墳氏は法規認証とクルマづくりのプロフェッショナル、ナンバーナインワークスとして、石丸はデザインスタジオFortmareiとして、別の道を歩み始める。

そして2026年、ナンバーナインワークスのプロジェクトとして、石丸はその車両の意匠刷新を託されることとなった。かつての組織では叶わなかった職能の交わりが、それぞれの研鑽の時期を経て、今ようやく重なり合う。石丸にとってこのプロジェクトは、自らが歩んできた道のりの正しさを問う、10年越しの「答え合わせ」の記録である。

二重の制約

このプロジェクト最大の挑戦は、現行の厳格な保安基準への完全適合と、既存デザインとの「高度な調和」を両立させることにあった。これはリヤセクションを維持したまま、フロントカウルを刷新するフェイスリフトであるが、加えて、車両のリバリー(グラフィック)も既存のものを維持する必要があった。単なるパーツの追加や一点物のカスタムとは一線を画し、3Dを駆使し、緻密な法規シミュレーションに基づいた「開発」のプロセスを辿っている。デザインの印象を大きく左右するヘッドライトも認証の取れたものの中から時間をかけて選定した。

「エンジニアリング」へと昇華させる論理的プロセス

石丸に課せられたのは、ナンバーナインワークスのクライアントである自動車メーカーや業界のプロフェッショナルが凝視しても、一切の違和感を感じさせない純正然としたクオリティ、そしてそれ以上の官能性を提示することであった。自身が携わっていない既存のデザインという文脈を読み解き、ノイズを排して新しい価値を上書きする。そこには、デザイナーとしてのエゴではない、プロとしての調整能力が求められた。

藤墳氏による精緻なエンジニアリングは、ミリ単位の法的な「制約」を、デザインを公道へと解き放つための「確かな根拠」へと変えた。全長変更に伴う構造変更、灯火器類の配光角、安全基準。それら全ての点を藤墳氏が論理的に繋ぎ、その軌跡の上を、Fortmareiのペンが走る。法規という名の必然性を、全体の調和へと昇華させる。そこにあるのは、知性と意匠が完全同期する、極めて論理的な工業デザインプロセスである。

黒衣が繋ぐ、ものづくりの純度

本プロジェクトは、特定の個人の手による作品ではない。ナンバーナインワークスが司る法規認証とクルマづくりの知性、Fortmareiによる意匠構築、そしてそれらを美しく現実へと落とし込んだ製造パートナー。各領域を極めたプロフェッショナルたちが、互いの領域を侵さず、かつ深く信頼してバトンを繋ぎ合わせる「プロのリレー」によって完遂された。

石丸は、ナンバーナインワークスのこの技術実証車において、藤墳氏の持つ「認証を伴うクルマづくりの真価」を最大化する一助となるべく、デザインの責務に向き合った。一人のエンジニアと一人のデザイナー、そして確かな腕を持つ職人たち。この最小単位の連携から生まれた結晶が、現実にナンバーを冠して公道を走る。

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