当時、同組織にありながら、藤墳氏らがゼロから作り上げた完成体に石丸が筆を振る機会は訪れなかった。その後、2018年に両者は独立。藤墳氏は法規認証とクルマづくりのプロフェッショナル、ナンバーナインワークスとして、石丸はデザインスタジオFortmareiとして、別の道を歩み始める。
そして2026年、ナンバーナインワークスのプロジェクトとして、石丸はその車両の意匠刷新を託されることとなった。かつての組織では叶わなかった職能の交わりが、それぞれの研鑽の時期を経て、今ようやく重なり合う。石丸にとってこのプロジェクトは、自らが歩んできた道のりの正しさを問う、10年越しの「答え合わせ」の記録である。
藤墳氏による精緻なエンジニアリングは、ミリ単位の法的な「制約」を、デザインを公道へと解き放つための「確かな根拠」へと変えた。全長変更に伴う構造変更、灯火器類の配光角、安全基準。それら全ての点を藤墳氏が論理的に繋ぎ、その軌跡の上を、Fortmareiのペンが走る。法規という名の必然性を、全体の調和へと昇華させる。そこにあるのは、知性と意匠が完全同期する、極めて論理的な工業デザインプロセスである。
石丸は、ナンバーナインワークスのこの技術実証車において、藤墳氏の持つ「認証を伴うクルマづくりの真価」を最大化する一助となるべく、デザインの責務に向き合った。一人のエンジニアと一人のデザイナー、そして確かな腕を持つ職人たち。この最小単位の連携から生まれた結晶が、現実にナンバーを冠して公道を走る。